……父が首吊り自殺をしたと聞かされたのは、それから約一週間後の事。
葬儀で、来ていた人はみんな涙を流していたけれど、私は何も感じなかった。
というか、感じられなかった。
親戚の人に、
『実の父の葬儀で泣かないなんて気持ち悪い娘だな』
と言われたけれどどうしても涙腺は崩壊しなかった。
ただただ口をつぐんで、真っ黒な服を着た人が行き交う葬儀場の虚空を見つめていた。
もちろん社長であった父が亡くなると、経済的に危機的状況に陥るし、私にも悪影響はある。
だから、悲しむべきなのだろう。
それが普通なのだろう。
それでも、ずっと表情を崩す事はできず、気付くと葬儀は終わっていた。
始終、私が涙を流す事はなかったのだった。



