その日は、雨が降っていた。
中学二年生だった私は既にクラスで孤立していて、学校が終わってからすぐに家に帰った。
傘を置いて、髪に着いた水滴を払ってリビングに入った時、思わず足を止めた。
「……っ」
そこには、重苦しい空気が垂れ込めていた。
すぐ、何かあったのだと悟った。
ソファには、平日にしては珍しく家族が全員揃って神妙な面持ちで座っていた。
近づくと、母が今気づいたかのようにはっと顔を上げ、「美夜……」とだけ呟いた。
訳が分からないままとりあえず兄の隣に座ると、向かいに座っている父が重々しく口を開いた。
「……お父さんの会社が、倒産したんだ」
「え……?」
倒産、した?
信じられなくて、しばらく固まっていた。
その後のことはよく覚えていない。
父の口数が減って表情が死んでいくのは、本当にあっという間だった。



