惚れさせゲーム

〇 三峰家・リビング(夜)
夜の静けさが広がるリビング。紗菜は中央に立ち、テーブルを端に寄せてスペースを作る。

スマホをソファの上に置き、「初心者向けダンスレッスン」の動画を再生する。
画面に映るインストラクターは滑らかなステップで説明を始める。

インストラクター(動画)
「まずは基本のステップから! 足を交互に出して、リズムを意識して……」

紗菜はインストラクターの動きを真似しようとするが、足が思うように動かず、ぎこちない。

紗菜(苦戦しながら)「……え、思ったより難しい……」

普段はどんな難題も冷静に解く紗菜だが、ダンスのリズムを取るのは予想以上に難しく、早くもつまずいていた。

紗菜(ため息をつきながら)「こんなの、翼は余裕なんだろうな……」

翼の軽やかな動きを思い出すと、少し悔しくなる。負けず嫌いな性格が、紗菜をさらに動画に没頭させる。

再び、動きを確認しながら足を運ぶも、バランスを崩し――

紗菜(驚いて)「わっ!」

足がもつれて、床に倒れ込む。

紗菜(痛がりながら)「いたた……ダンスって、こんなに大変なの?」

床に座り込み、天井を見上げる紗菜。ここで終わってしまいたい気持ちが湧き上がるが、すぐにその思考を打ち消す。

だが、ふと翼の挑発的な笑顔が脳裏をよぎる。

翼(回想)
『逃げるつもりじゃないよな?』

その言葉が紗菜の胸を打ち、再び拳をギュッと握りしめる。

紗菜(決意を込めて)「……負けるわけにはいかない」

ゆっくりと立ち上がり、もう一度動画を再生し、集中して練習を始める。

こうして、三峰紗菜の不器用なダンス練習が始まった――。