惚れさせゲーム

〇 ゲームセンター内

ゲームセンター内は、明るい音楽と機械の音が響き渡っている。
カラフルな照明がきらきらと輝き、子供たちやカップルたちが賑やかに遊んでいる。
紗菜と翼もその中にいるが、周りの喧騒に少し圧倒されているようだ。

紗菜「こんなところでプリクラなんて、ほんとに恥ずかしいんだけど…」

翼「気にすんなって。だって、こんな感じの場所で撮ったら後で見返したときに笑えるだろ?」

翼がカプセル型のアーケードゲームの前を歩きながら言うと、紗菜も一瞬その場に立ち止まり、
遠くで回転するカプセルの音に耳を傾ける。

紗菜「それにしても、ゲームセンターって久しぶりだなぁ。何か懐かしい感じがする」

翼「だろ? たまにはこうやってアーケードゲームやるのもいいもんだぜ」

翼は無邪気にボタンを押すと、すぐにゲーム機から「クリア!」の音が鳴り響く。

翼「おっしゃ!これ、俺もう一回やる!」

紗菜は、翼が遊んでいるのを見ながらしばらく立ち尽くす。
周りでカップルたちが笑いながらゲームに興じているのを見て、少し照れくさそうな表情を浮かべる。

紗菜「……あんまり上手くないのに、楽しそうだね」

翼「そう? でもお前、結構ゲーセン得意だろ?」

翼はちらっと紗菜の方を見て、にやりと笑う。紗菜はそれに気づき、顔を赤らめて反応する。

紗菜「何言ってんのよ! 私はただ、昔よく遊んでただけ」

翼「なら、今度は勝負しよっか?」

突然の提案に紗菜は少し驚くが、次第にその気になり、腕を組んで反応する。

紗菜「ふーん、じゃあ負けた方が何か一つやらないといけないルールにしよう」

翼「おっ、なかなか挑戦的だな。でも覚悟しとけよ、俺、意外と強いからな」

その後、二人はゲームセンターの対戦型ゲームで勝負を始める。
周りの人たちの目も気にせず、楽しそうにゲームに熱中する二人。
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〇 ゲームセンター・対戦型ゲームコーナー

ゲームセンターの一角、色とりどりのライトが輝く対戦型ゲームコーナーに、紗菜と翼が並んで立っている。
周りの人々が楽しそうにプレイしている中、二人は対戦の準備を整えた。

翼「よし、いくぞ! 俺が勝つからな!」

紗菜「勝ったら、なんか得点でもあるの?」

翼「当然! 俺が勝ったら、次のデートは俺の好きな場所に行くっていう罰ゲーム付きだ!」

紗菜「え? それってちょっとおかしくない?」

紗菜は疑問の声を上げるが、翼は無邪気にニヤリと笑う。

翼「いいじゃん、楽しむためのルールだろ?」

紗菜は少し照れくさそうに肩をすくめると、ゲーム機のボタンを押す。

二人のキャラクターが画面上に現れる。

紗菜「いいけど、負けないからね!」

翼がゲームの画面を見つめ、楽しそうに言う。

翼「じゃあ、お前の“本気”を見せてもらおうかな!」

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〇 対戦開始

ゲームが始まると、画面が切り替わり、二人のキャラクターが戦いを繰り広げる。
紗菜はすぐに操作を始め、キャラクターをスムーズに動かして攻撃を仕掛ける。

紗菜「どうだ! このコンボ、決まるよ!」

画面上で紗菜のキャラクターが連続攻撃を決め、翼のキャラクターが少し後退する。翼は焦ったようにボタンを押す。

翼「おっと、なかなかやるな!」

しかし、次の瞬間、翼は画面を見つめながらにやりと笑う。

翼「でも、お前のその技、もう読めてるから」

そして、翼は素早く連続でボタンを押し、紗菜のキャラクターを反撃で打ち返す。

翼「さあ、俺のターン!」

画面上で翼のキャラクターが反撃を決め、紗菜のキャラクターがダメージを受ける。
紗菜はすぐに立て直そうとするが、少し焦ったように動きが乱れる。

紗菜「くっ…! 何それ、めっちゃ早いじゃん!」

翼「これが“俺流”の戦い方ってやつだな」

紗菜は黙々とプレイしながらも、少しずつ冷静さを取り戻す。

紗菜「ふふ、まだ終わらないから!」

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〇 激しい戦い

画面上で二人のキャラクターが近距離で対決し、攻防が続く。

どちらのキャラクターもあと少しで倒れるところまで来ている。

紗菜「これで決める!」

紗菜はボタンを押し、キャラクターが必殺技を繰り出す。

その瞬間、画面が一瞬白く光り、技が炸裂する。

紗菜 「いけーっ!」

技が翼のキャラクターに直撃し、大きなダメージを与える。

翼は驚いた顔をして、画面に集中する。

翼「な、なに!? そんなのアリかよ…!」

しかし、翼は慌てることなく、逆転の一手を打ち出す。*

翼「まだだ! 俺の必殺技が残ってる!」

翼のキャラクターが最後の力を振り絞り、驚異的なスピードで突進。

紗菜のキャラクターがそれを避ける暇もなく、技が炸裂してダメージを与える。*

翼「終わりだ!」

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〇 結果発表

*ゲームが終了し、画面に「WINNER」の文字が大きく表示される。

紗菜のキャラクターが倒れ、翼のキャラクターが勝利を収めた。*

紗菜「うう…やられた…」

紗菜は軽く肩を落とし、悔しそうに画面を見つめる。

翼「ほら、言っただろ? 次のデートは俺の好きな場所にしようぜ!」

翼は得意げににやりと笑いながら、紗菜に向けて拳を突き出す。

紗菜「もう、しょうがないなぁ…」

しかし、紗菜は負けを認めると、軽くため息をつきながら拳を突き出す。

紗菜「次こそは絶対に勝つんだから!」

翼「その時を楽しみにしてるよ」

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〇 ゲームセンター

ぬいぐるみを抱えたまま、紗菜はため息をつきながら翼を睨んだ。

紗菜「……次はどこ?」

翼は腕を組みながらニヤリと笑う。

翼「そりゃあもちろん、プリクラだろ?」

紗菜「は?」

翼「カップルのデートスポットといえばプリクラ。これは定番だろ?」

紗菜「罰ゲームにしてはハードルが高すぎるんだけど」

翼「嫌なら別にいいぜ? その代わり――」

翼はスマホを取り出し、紗菜の方へ突きつける。


「この前の数学テスト、俺のほうが点数高かったことをクラスのグループLINEで報告するけど?」

紗菜「それは絶対にやめて」

翼「じゃあ決まりな」

紗菜は渋々プリクラ機の前へと足を向ける。

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〇 プリクラ機内

狭いブースの中、翼と紗菜はぎこちなく並んで立っていた。

翼は気楽そうに画面を操作し、ポーズの選択を始める。

翼「ほら、紗菜もポーズ決めろよ」

紗菜「そんな急に言われても……」

戸惑う紗菜をよそに、シャッターが切られる。気づけば翼が勝手にピースをして写っている。

紗菜「ちょっと! まだ心の準備が――」

翼「お、次のシャッター来るぞ!」

慌ててポーズを取ろうとするも、またしても不意打ちで撮られる。

さらに、翼はイタズラっぽい笑みを浮かべていた。

翼「よし、次は俺の肩に頭乗せろ」

紗菜「はぁ!? 絶対に嫌!」

翼「ノリ悪いな~。じゃあ俺が寄っちゃおっかな~?」

翼が冗談めかして紗菜の方に顔を寄せる。瞬間、シャッターが切られた。

紗菜「ちょ、ちょっと待って!? 近いってば!」

画面に映し出された写真は、まるで本物のカップルのようだった。

翼はそれを見て満足げに頷く。

翼「おー、いい感じじゃん」

紗菜「どこがよ!」

翼「いや、普通に映えてるし? これ、保存しとこ」

翼がさっさとデータをダウンロードする。

紗菜は唖然として言葉を失う。*

紗菜(モノローグ)
「最悪……!」

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〇 商店街

プリクラのダメージを引きずりながらも、紗菜は翼と商店街を歩いていた。

夕暮れ時の商店街は、学生や会社帰りの人で賑わっている。

翼「お、たい焼き屋あるじゃん。食べる?」

紗菜「……いらない」

翼「そっかー、残念。俺は食うけど」

そう言いながら、翼はたい焼きを二つ買う。
一つを頬張りながら、もう一つを紗菜の前に差し出す。

翼「ほら、お前も食えよ」

紗菜「いらないって言ったでしょ」

翼「でも、これ"クリーム"だぞ? あんこじゃなくて、クリーム」

紗菜「……っ!」

ピクッと紗菜の肩が揺れる。実は彼女、クリーム系の甘いものが好きなのだ。しかし、それを翼に知られるのは癪だった。

翼「ほら、遠慮すんなって」

紗菜が受け取る前に、翼はたい焼きを彼女の口元へと近づける。

紗菜「!? な、何してんのよ!」

翼「はい、あーん」

紗菜「馬鹿じゃないの!? 自分で食べるから!」

慌ててたい焼きを奪い取り、一口かじる。ふわっと広がる甘いクリームの味に、思わず表情が緩んでしまう。

翼「お、ちょっと顔ほころんだ?」

紗菜「べ、別に!」

慌ててそっぽを向くが、翼の笑い声が聞こえてくる。

翼「やっぱり、お前といると面白いな」

紗菜「……意味わかんない」

そう言いながらも、紗菜の心臓はなぜか少しだけ早くなっていた。

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〇 駅前

デート(罰ゲーム)も終わり、駅前で解散する時間が来た。
翼は手をポケットに突っ込みながら、紗菜の方を見る。*

翼「楽しかった?」

紗菜「……微妙」

翼「おいおい、もうちょい素直になれよ」

紗菜「別に、普通」

翼は肩をすくめながら笑う。

翼「ま、今日は第一ラウンドってことで」

紗菜「は?」

翼「次は俺が"本気"で惚れさせるデートを計画しとくからな」

紗菜「ちょっと待って、まだ続く気!?」

翼「もちろん!」

翼は自信たっぷりにウィンクする。紗菜は思わず頭を抱えた。

紗菜(モノローグ)
「……この罰ゲーム、終わる気がしない」

こうして、紗菜の"罰ゲームデート"は、まだまだ続くことになりそうだった――。