雪くんは、まだ足りない。


逃げんなよ
それだけが低く言われ、背中がゾクッとする。


だけど少し離れてわたしを見る顔はいつもの優しい顔。




「ご乗車、ありがとうございました。お忘れ物などないよう──」


「降りるよ」


「う、うん…」




目的の駅に着くと遊馬くんはわたしの手を取って人ごみを掻き分け、電車を降りる。


今日、放課後…どこか連れていかれたりするのかな。
この前まで嫌だって思ってたのに。


遊馬くんといると頭が痺れて正常な判断が出来ない。


遊馬くんが何を考えているかもわからない。


どこまで教えてくれるの?


わたしなんかに、全部を教えてくれるの?