雪くんは、まだ足りない。


離れてた間のことも
どうしてあの場所にいたのかも
助けてくれた理由も。


不意に涼乃ちゃんが言ってた言葉を思い出す。


“蘭が遊馬くんに聞いたらいいよっ”


遊馬くんはわたしに教えてくれるのかな。


教えてくれるなら…知りたい。


全部、知りたい。




「知りたい…、遊馬くんのこと……知りたい」


「……可愛すぎ、なんでそんな可愛いこと言うの」




頬に手を添えられ優しく撫でられる。


大きな遊馬くんの手はやっぱり温かい。


グイッと顔を上に向けさせられた。
遊馬くんの顔が近づき耳の横に唇を寄せる。




「いいよ、俺のこと教えてあげる」


「…うん…」


「だから今日は、一緒に帰ろ」


「一緒に?」


「迎え行くから……逃げんなよ」