雪くんは、まだ足りない。


さっきの人たちとは違う、温かい手。


手が冷たい人は心が温かいって話を聞いたことがある。
じゃあ手が温かい人は心が冷たいの?って考えたことがあったことをふと思い出した。


…そんな事ないって今なら断言出来る。


だって遊馬くんはわたしを助けてくれた。


そんな人の心が、冷たいわけがない。


空いた方の手でわたしのおでこに触れ前髪をあげた遊馬くんの顔が近づいてきて…小さなリップ音が聞こえた。


前は手の甲に感じた柔らかい感触が、今度はおでこに落とされた。




「あんまり可愛いことしないで」


「…っ…」




わたしの髪を掬い上げ耳にかけると、繋いだ手が離れていく。