雪くんは、まだ足りない。


そう言ってまたわたしを抱き締める遊馬くん。


遊馬くんが…助けてくれた…。




「怪我ない?」




さっきまでの声とは違い、いつもの遊馬くんの声で聞かれたわたしは頷く。


はあ…とため息をついた遊馬くんの体の力が抜けていく。




「蘭ちゃん、あんま心配かけないで」




怪我ないって言ったのに離してくれない遊馬くんを見てほんとに心配してくれたんだって思った。


遊馬くんの背中の向こう側には、地面に倒れてる人が4人。


…さっきの人たち?




「遊馬くん…」


「何?」


「ありがと…」


「蘭ちゃんのためなら何でもするよ、俺」




どうして…どうしてそこまでわたしにしてくれるの?


助けてくれたのも、こうやって抱き締めてくれるのも。


誰にでもしてるの…?