雪くんは、まだ足りない。


声のした方に顔を上げた瞬間、強く抱き締められた。


え、え、なに?


容赦ないその力に苦しくなってしまい、両手でわたしを抱き締めている人の肩を押す。


ゆっくりと離れていくその人の銀髪の髪の毛がわたしの頬をかすめた。




「あ…あすまく」


「危ねぇだろっ、こんな時間に1人で何してんだ!」




怒鳴っている遊馬くんの顔は…怒った顔じゃなくて眉を下げて心配したような顔をしていた。


その表情に胸がどくん、と高鳴る。


口を開けて何か言おうとするけれど、何から話していいかわからない。




「俺が来なかったどうなってたか分かってんのか!…ほんと…心臓に悪い…っ」