雪くんは、まだ足りない。


勇くんに手招きされて廊下の向こう側からやってきたのは…遊馬くん。


指さす方に顔が向いて…わたしと視線が合った瞬間に目を細めて微笑んだ。


フリフリとわたしに向かって手を振る。


もちろん振り返すことはせず顔を背けて伽耶ちゃんに目で助けを求めた。


だけど伽耶ちゃんは微笑むだけ…。


ああ…もうだめだ…。





「おはよ、蘭ちゃん」




目の前にかっこいい顔が現れる。


どうしてここまでわたしに構うんだろ。
遊馬くんは…何がしたいんだろ…。




「昨日、待っててって言ったのに」


「あの…お母さんから頼まれ事してて…」


「じゃあ今日は?」


「今日もちょっと……か、伽耶ちゃんと約束が、ね?」