雪くんは、まだ足りない。


最後の確認。


髪の毛よし、前髪よし…リップは、塗り直して。




「お母さーん!行ってくるね!」


「はーい、気をつけていくのよー」


「わかってるよー!」




玄関からキッチンにいるお母さんにそう声をかけて、新しく買ってもらった焦げ茶のローファーを履く。


このローファー履くの高校生っぽくて憧れてたんだよねー…。


下を向いてローファーを眺めた後、玄関の扉を開けた。


雲ひとつない晴天。
絶対いい日になるぞーっ。


わたしは駅に向かうべく歩き出す。


そういえば一昨日、隣の空き家に引っ越してきたひとがいたんだっけ?


隣の家には2台分の駐車スペースに1台だけ車が停められていた。