雪くんは、まだ足りない。









あれから数日。


よく見ないと見えなくなった遊馬くんの付けた…あれ、は隠さなくてもいいくらいになった。


次の授業が終わればお昼ご飯ーっ。




「蘭、移動教室行くよ」


「ちょっと待ってー!」




伽耶ちゃんに声をかけられ、机の中から教科書とノートを出して机の上の筆箱を持って立ち上がる。


廊下で既に待ってくれていた涼乃ちゃんと伽耶ちゃんに駆け寄った。




「お腹減ったー」


「あ、わたしグミ持ってるよ」


「蘭ナイスー!わたしもちょうだい」




2人の手のひらに袋を振ってグミを取り出す。


わたしも1個食べちゃおー。


口の中にぶどう味のグミを入れて前を向くと、少し先の廊下に背の高い人が歩いているのが見えた。