雪くんは、まだ足りない。


「名前、呼んで?」


「呼ぶからっ」


「今呼んで」




昔はゆきちゃんってそう呼んでいたはずなのに、少し大きくなっただけでこんなに難しい。


方に乗っていた重さが無くなり、わたしの目を真っ直ぐに見つめる瞳。
透き通っててほんとに綺麗。


見つめられる中、呼ぶのは恥ずかしいけど…
でも今はこの状況から早く逃げ出したい。




「ゆ、雪、くん…」


「よくできました」




遊馬くん…嬉しそうに笑ってる。
ほんとに名前で呼んで欲しかっただけなんだ…


ほっとして耳から両手を離す。




「油断大敵」


「え…」




遊馬くんが小さく呟いた時にはもう遅い。