雪くんは、まだ足りない。


差し出された手になんの抵抗もなく手を重ねる。


…気持ちひとつでこんなに変わっちゃうんだ。
今までは遊馬くんと手を繋ぐなんて難易度高めだったのにこんなにあっさり。




「どこ行くの?」


「んー、2人になれるとこ」




手を引かれるまま廊下を歩く。


もうほとんど廊下には生徒は居なくて、通り過ぎる教室から遊馬くんへの黄色い声が聞こえてくる。


だけどそんなのなんのその。
一瞬も声のする方なんて見ない遊馬くん。


ほんとどこまで行くんだろ。


歩いて歩いて……ガラッと遊馬くんが扉を開けたそこは小さな部屋?




「ここ…?」


「あの数学おじいちゃんがよくいる所」




数学のおじいちゃんって…
わたしのクラスが今受けているであろう先生の?