雪くんは、まだ足りない。


ほんとにやめて涼乃ちゃん……!!


自分の気持ちを整理してるのに!
こんなんじゃ余計…


余計意識しちゃう……っ




「じゃあ10分だけでいいからさ」


「10分…だけ?」


「ん、だめ?」




たまに遊馬くんが耳を垂れさせた子犬に見えるのはわたしだけ……?


うるうるした瞳で見つめられた上に、首を少し傾げて聞くなんて可愛すぎて断れるわけないよ……


なんてずるい人なの。




「ほんとに10分……?」


「ほんと」


「ほんとのほんと?」


「ほんとのほんと」


「……じゃあ…10分だけ…」




わたしの小さな声に垂れた耳はぴょんっと立ち上がり、悲しそうな顔だったのがぱああっと嬉しそうな顔に変わる。