雪くんは、まだ足りない。


どうしていいか分からなくて視線を逸らす。




「ほら蘭!遊馬くん手振ってるよ!」


「う、うん……」


「恥ずかしがらない恥ずかしがらない」




伽耶ちゃんはわたしの両頬を掴んで無理矢理遊馬くんの方を向かせた。


そらす前と変わらない微笑み。


ああ…その微笑み眩しすぎっ!
振り返した方がいいかな……


手をあげようとしたその時、周りがザワザワし始めていることに気がつく。




「わー!遊馬くんがこっち見てるよっ」


「今わたしと目が合った!」


「勇くんも手振ってる〜〜!!」




遊馬くん達がいる上を見上げ、ぴょんぴょん跳ねながら手を振っている女子生徒やスマホで写真を撮る人。


推しに会えたファンみたい…