雪くんは、まだ足りない。


さっきまでとはまた違う表情をして見られる。


…逃がさない、だからちゃんと言え。
言われてないけどそう目で訴えられているような気がする。




「さっきも勝手に遊馬くんのこと想ってるって言ってたよね」


「聞いてたの!?」


「聞こえたの」


「聞こえたならもっと早く助けてよっ」


「んー、でも蘭ちゃんの続きの言葉が気になっちゃって」




ずっと外で聞いてたってこと!?


なんて人なの!




「まあいいや、今度またゆっくり聞かせてよ。蘭ちゃんが言いたくなったらさ」


「えっと…」


「帰ろ、こんなところ長くいたくないでしょ」




立ち上がって部屋から出ていく遊馬くんを追いかける。