雪くんは、まだ足りない。


涙ぐんだポニーテールの先輩が遊馬くんの横を通り過ぎて出て行く。


残った4人の先輩たちはポニーテールの先輩を「日菜子(ひなこ)!」と呼びながら行ってしまった。


……日菜子先輩って言うんだ…。
怖い先輩だった…。




「大丈夫?」


「へっ!!」




遊馬くんがしゃがんでわたしの声を掛ける。


びっくりして変な声が出てしまったことが恥ずかしくて、両手で口元を押さえる。


そんなわたしを見て笑う遊馬くんはどこか悲しそうに見えた。


なんでそんな風に笑ってるのか
わたしにはわからなかった。




「ごめんね」


「…?」


「今の事とこの前の事。全部俺のせい、ほんとごめん怖かったよな」