雪くんは、まだ足りない。


遊馬くんが突然しゃがんだかと思ったらわたしの腕を掴む。




「え…っ!?」




すごく強い力で引っ張りあげられ、一緒にその場に立ち上げられた。


体育館にいる全ての人たちからの視線が集まる。


な、なになになになに!?


なにが起こって…!


肩を抱かれるように引き寄せられ遊馬くんに密着するような形になる。


ち、ちか…っ




「この女、俺のだから手出したら殺す」


「こ、ころ……!?!?」




物騒な言葉が聞こえ顔を上げると、ステージの上を見たままの遊馬くんの横顔。


綺麗な二重の切れ長な目はわたしの方を見ない。


騒ぎ始める体育館を強面の先生が出てきて静かになるように叫ぶ声が遠くに聞こえる。