雪くんは、まだ足りない。


遊馬くんのことを知りたくてきたはずなのに…
知れたようで、何一つ知れなかった気もする。


隣にこうやって座っている。


それは確かなのに遠くにいるような気がしてしまう。




「可愛いね、蘭ちゃんは」


「ーーっ!」




脈絡のない言葉と声に心臓が口から出そうになる。


遊馬くんの言葉には魔法でもかかっているのかな…。
ジン…と頭が痺れるような。


不思議な感覚になる。




「また赤くなった」


「遊馬くんが変な事言うから…っ」


「俺はいつも本当のことしか言わない」




銀色の髪の毛の隙間から真っ直ぐな瞳がわたしを見ている。


変だ…遊馬くんといるといつも暑くなって、鼓動も痛いくらいに早くなる。