最後の旋律を君に

翌日、学校の昼休み。

 律歌はカバンを抱え、教室の端でお弁当を広げている鈴子のもとへ向かった。
 鈴子は律歌の姿を見つけると、ぱっと明るい笑顔を見せた。

 「律歌、どうしたの?」

 律歌は少し照れくさそうに微笑みながら、鈴子の隣に腰を下ろした。

 「ねえ、鈴子。今度の休日、一緒にカフェ巡りしない?」

 鈴子は目を丸くして、少し驚いた様子を見せた。

 「カフェ巡り? 律歌から遊びに誘ってくれるなんて珍しいね!」

 「うん……最近、あまり鈴子と遊べてなかったから。たまには気分転換したいなって思って」

 律歌が少し照れくさそうに言うと、鈴子は嬉しそうに手を叩いた。

 「いいね! じゃあ、前から気になってたカフェがあるんだけど、そこ行ってみる?」

 「うん、行きたい!」

 久しぶりに遊びに行く予定が決まり、律歌の心は少しだけ軽くなった。

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カフェ巡り当日

 週末の朝、律歌と鈴子は待ち合わせ場所で合流した。

 「律歌、今日の服、可愛い!」

 鈴子が律歌の淡いベージュのニットワンピースを見て、ニコニコと褒める。
 律歌は少し頬を染めながら、「ありがとう」と微笑んだ。

 最初に訪れたのは、アンティーク調の小さなカフェ。

 「わあ……ここ、すごくおしゃれ」

 店内は木の温もりを感じる落ち着いた雰囲気で、壁には可愛らしいレトロなポスターが飾られていた。
 テーブルに並ぶスイーツも、まるで芸術品のように美しかった。

 「私はこのベリータルトにしようかな」

 「じゃあ、私は紅茶のシフォンケーキにしよう」

 二人はスイーツとカフェラテを注文し、ゆったりとした時間を楽しんだ。

 「律歌がこんなふうに遊びに行こうって言ってくれるの、なんだか新鮮だね」

 鈴子が嬉しそうに言うと、律歌は少し恥ずかしそうに微笑んだ。

 「奏希くんに、友達との時間も大切にしてって言われたの」

 「そっか……奏希さん、優しいね」

 律歌はカップを手に取り、ゆっくりとカフェラテを口に運ぶ。優しい甘さが心をじんわりと満たしていくようだった。

 「鈴子、今日は誘ってよかった。楽しい」

 「うん! 私もすごく楽しい!」

 二人は笑い合いながら、お互いの近況を話し、穏やかなひとときを過ごした。

 ――律歌はこの時間がとても大切に思えた。
 それと同時に、奏希の言葉の意味が少しずつ心に沁みていく。

 (私は奏希さんのそばにいたい。でも、それだけじゃなくて、こうして友達との時間も大切にしたい)

 ふわりと舞い降りるような、優しい気持ち。
 この日、律歌は心の中で、小さな変化を感じていた。