「お迎えの方が来ちゃう前にご飯食べちゃいなさい!パパー!ご飯できましたよー!」
「……全然理解できない。迎えって何」
いつもの席に座ると目の前にはいつも通り出来たての美味しい朝ごはんがある。そう、手元にある謎の新しい制服とさっきの話さえ無ければいつも通りなのに。
「ごめんね、ママ遅くなっちゃって」
そしていつも通りスーツを着ているお父さん。
朝の挨拶でお母さんの頬にキスをしてから私の目の前の席に座る。
「おはよう、芹那」
「……んっ」
「どうしたんだい?なにか怒ってる?」
「今日から学校が変わるって話まだしてなくって」
料理を出し終えたお母さんがお父さんの隣の席に座る。
「………え?」
「ご飯食べ終わったら制服着替えてきてね!とっても可愛い制服なのよ」
「……マ、ママ?話してなかったのかい?」
呑気に話すお母さんとは、うって変わって開いた口が塞がらないという表情のお父さん。
転校のことを知らなかったのは当事者の私だけなんだ。
「芹那、ごめんね?もうとっくにママが話してるものだと思っていたよ」
「……別に。」
「芹那ちゃんの寮に必要なものは全て学園に送ってあるから安心していいのよ!すっごいことなのよ!Sクラスに選ばれるなんて!」
寮、Sクラスと知らない情報が耳へと届く。
楽しそうに話すお母さんの隣で申し訳なさそうな顔をするお父さん。
「……そっか」
「ママ、少し静かにしていて。芹那はこれから蘭舞学園に転校するんだ。クラスがA~Fが普通科で特別カリキュラムのSクラスに入れることになったんだ。全寮制で外部との連絡は取れないらしい」
「………すっごいダサい名前」
「あ、はははー。実は昔の知人からどうしても芹那に来て欲しいって頼まれたのと、そこのカリキュラムが芹那にとっていい刺激になりそうだなと思ってね」
「とりあえず、わかったよ。着替えてくるね、ごちそうさま」
「……あ、芹那―――」
