「お、ゆづやん」
「え」

 昇降口の出入口から聞こえてきた声に思わず視線を向けてしまった優月は後悔した。あれから敢えて避け気味にしていた虎谷がそこに居たからだ。

「なかなか会えんくて寂しかったわ〜」
「そうですか……」
「なんやゆづ、反応うっすいなぁ〜。てか何してるん?」
「……」
「ははーん? その様子やとさては傘忘れたんか? やっぱゆづ、鈍臭いやっちゃなぁ〜?」
「っ……どうせ私は鈍臭いので構わないで下さい」

 気にしてる事を虎谷に何の捻りもなくそのまま言われて優月は無愛想にそう返す。