──優月の両親は厳しい人だった。
 悪い事をしたら当たり前だっただろうが、いい事をしても眉をひそめて不機嫌そうな二人を前に子供の優月の心は萎縮してばかりだった。
 何をしてみても褒められた覚えは無い。いつも返ってくるのは『油断せず精進なさい』『今後もしっかりとね』と言った優月にとって威圧を感じる言葉ばかりだった。
 愛情が無いわけではなかったのかもしれない。それでも言葉にしてくれない両親に優月はやがて『愛されてない』と解釈するのも無理もない話だっただろう。

(あんまり強く降られると……うぅ……)

 だから、嫌な記憶しかない雨の日に優月はトラウマが生まれていた。