「俺は虎谷 隼人(とらや はやと)な」
「虎谷……って、せ、先輩?!」

 名前を聞いてその珍しい名字に引っ込み思案な優月でも聞き覚えはあった。

「なんや、俺の事知っとるん?」
「な、名前だけ……クラスの子達が噂で話してたのがたまたま聞こえてきただけです、けど……」
「そうなんか? 俺、下級生にも名前通ってるんか〜」

 なんや照れるなぁとにこやかに話す虎谷に対して、優月は内心どうしようと焦りが芽生える。
 虎谷 隼人先輩……彼はあんな様子だがクラスで毎日聞こえる名前だ。それこそ、クラスに馴染めず友人が少ない優月でも、と言う具合には。