妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

「それから僕は、よくわからなくなった。もう二度とそのようなことが起こらないように、表情を作る練習をしたんだ。結果的に、社交界でやっていけるくらいのものは身に着けられたと思う。ただそれは、偽りの表情だ。本当の感情を表に出そうとすると、どうしてもあの時のように笑ってしまう……」

 ウェリダンお兄様は、ゆっくりと私の方を向いた。
 そこで彼は、目を少し見開く。いや、表情は動いていない。今は私が錯覚しているだけだ。
 ただ何はともあれ、ウェリダンお兄様は驚いているようだった。やはり途中から、私に話しているということがわからなくなっていたのだろう。彼は少し、焦っているように見えた。

「……僕としたことが」

 ウェリダンお兄様は、いつも通りの笑みを浮かべていた。
 ただそれは恐らく、誤魔化しの笑みだ。お兄様はきっと、今まで自分が喋っていたことが失言だと思っているのだろう。