妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

 保護とされているが、実際の所は管理という方が正しいだろう。
 私という存在がヴェルード公爵家を揺るがさないように縛り付ける。きっとそれが、私をさらった目的だ。
 私にとっては、いい迷惑である。公爵家の人間などになりたくはなかった。私はただひっそりと、あの村で暮らせればよかっただけなのに。

「それにしても、滑稽で仕方ありません。こんな下賤なものは社交界には必要ないというのに……」
「とっと消え去って欲しいものですね……」

 ヴェルード公爵家に保護されたせいで、私はこうしていびられることになっている。私はこんなことは望んでいなかった。何故私が、こんな目に合わなければならないのだろうか。

「……おい」
「え?」
「お前ら、何をやっているんだ?」

 そんなことを考えていると、辺りに知らない人の声が響いてきた。
 声の方向を見てみると、私と同年代くらいの一人の少年がいる。彼はその目を細めて、私にひどい言葉をかけていた二人の令嬢を見据えていた。