妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

 ただ、同時に私が今まで抱いていた疑念は確信に変わった。彼は今、私に意識を向けてきたのだ。今までは別の人のことを言っていたのだろう。

「どいつもこいつも……」
「ディトナス侯爵令息、どこへ行く?」
「ヴェルード公爵家との婚約なんて、こちらから願い下げだ。薄汚い平民の血を引く娘と婚約させられるなんて、僕はごめんだからな」

 ディトナス様は、私達に背を向けた。
 彼は、ダルークさんの方を見ている。それで改めて理解できた。ディトナス様が忌み嫌っているのは、彼であるということが。
 恐らく、ダルークさんはただの庭師ではないのだろう。予想が正しければ、私と同じような立場かもしれない。

 しかし何はともあれ、この場は一旦収まったということになるだろう。
 ディトナス様への抗議などは、ヴェルード公爵家の屋敷に戻ってから考えるべきことだ。それは私達だけで判断して良いことではない。