「次の日休みにでも買いに行くか。」
「そうだね、、、あんまり間空けると、怪しまれちゃいそうだもんね。」
「どこの指輪がいい?」
「安い指輪でいいよ。」
「、、、何か、ごめんな。」
突然俯き、暗い表情をして謝る蓮見部長。
わたしは「急にどうしたの?」と言い、カフェラテが入ったマグカップをテーブルに置いた。
「いや、、、初めての結婚指輪を買うのが俺でさ。本当なら、好きな男に買ってもらう物なのに。」
いつもふざけたり、冗談ばかり言っている蓮見部長の落ち込んでいるような表情をわたしは初めて見た。
わたしは蓮見部長の言葉に「ううん、気にしないで。」と言い、それから「わたしにはもう縁のない物だと思ってたから!」と出来るだけ明るい口調で言った。
「そんなことないだろ。」
「ううん、わたし、、、もう恋はしないって決めたんだ。裏切られるのも、騙されるのも、もう懲り懲り。それが好きな人だったら、尚更傷付くから、、、だから、もう恋はしないし、結婚も無縁なものだったから。これが最初で最後の結婚指輪になる。最初は契約結婚っと聞いて、はぁ?!って思ったけど、よく考えればわたしにとっては無縁だった事が一年だけとはいえ、経験出来るんだから。逆にありがとうかも!」
わたしがそう言って笑って見せると、蓮見部長は「そんな悲しい事言うなよ。」と切なげな表情を浮かべた。
わたしは再びマグカップを持ち、カフェラテを口へ運ぶと「はぁ、、、美味しい。今日のご飯、何にしようね?まだ買い物出来てないし、何か食べに行く?」と話を逸らし、平気なフリをした。
本当は自分で自分を傷付けて、心に傷が増えたくせに。



