それから一ヵ月後、わたしは小森咲から蓮見咲になってしまった。
そして、あまり周りに知られたくなかった為、仕事上は"小森"のままで良いと言ったのだが、緋山専務に「結婚したんだから、ちゃんと変えないと!」と言われ、社内メールの名前や社員証の名前まで"蓮見"に変えられ、社内中に蓮見部長と結婚したことがあっという間に広まってしまった。
家の方は別居のままでいいんじゃないかと思ったのだが、さすがに住所変更をして蓮見部長と住所が同じじゃないと変に思われると気付き、わたしは蓮見部長の家に引っ越すはめになり、ただの契約結婚とはいえ、色々とやらなきゃいけない事が多く、落ち着くまでは忙しさのあまりグッタリだった。
「はぁ、、、やっと終わったぁ、、、」
わたしは一通りの事を終え、ソファーの上にくたぁ~っと寝転んだ。
「お疲れさん。」
そう言って、蓮見部長はわたしに甘さ控えめのカフェラテを淹れてくれた。
「ありがとう。結婚するって、こんなに大変なんだね。」
「まぁ、大変なのは女性側だよな。」
「その大変な思いをさせたのは、どこの誰でしょう?」
「、、、申し訳ない。」
わたしはソファーから起き上がり、蓮見部長が淹れてくれたカフェラテを飲んだ。
そんなわたしの隣に腰を掛ける蓮見部長はブラック珈琲を飲んでいた。
「はぁ、、、美味しい。」
「それは良かった。そういえばさ、結婚指輪なんだけど、、、」
「え、別に必要なくない?一年だけの為に買うなんて、お金が勿体ないよ。」
「でも、専務がさ、まだ結婚指輪買ってないのか?ちゃんと買ってやらないとダメだぞ〜って。」
「緋山専務、よく見てるね、、、。」
というわけで、たった一年の契約結婚の為に、結婚指輪まで買うことになってしまったのだった。



