「くしゅんっ、、、」
ヤバい、昨日ずぶ濡れで帰ったから、風邪引いたかなぁ。
そう思いながら、わたしは何事も無かったようにいつもと変わらず会社に出勤し、フロアの廊下を歩いていた。
すると、「あ!丁度良かった!小森!」とわたしを呼ぶ声が聞こえ、ふと顔を上げると、人けの無い廊下の隅に緋山専務と蓮見部長が居て、蓮見部長がわたしに手招きをしながら呼んでいたのだ。
わたしは何だろう?と思いながら、緋山専務と蓮見部長の元へ歩いて行った。
「おはようございます。」
わたしがそう挨拶をすると、突然蓮見部長がわたしの肩を抱き「専務、俺たち婚約してるんですよ!」と言い出したのだ。
はっ?!
わたしは驚き、蓮見部長を見上げると、蓮見部長はわたしに"話を合わせろ"とでも言い出そうな瞳をして「な?」と言った。
「あ、は、はい、、、。」
わたしは渋々、話を合わせる為に苦笑いを浮かべ、そう返事をした。
「なので、専務からいただいたお見合い話は、申し訳ないんですが、、、」
「そうかぁ、婚約者が居るなら仕方ないなぁ。それにしても、蓮見くんと小森さんが婚約してたなんて知らなかったなぁ!小森さんはしっかりしてるし、蓮見くんのことを支えてくれそうだ。入籍する時は、保証人になってやるから、婚姻届を持って来るんだぞ?じゃあ、蓮見くん失礼したな!」
そう言って、緋山専務は後ろで手を組んで去って行った。



