さすがに不安になったわたしは、彼が予約をしたと言っていた旅館に問い合わせをした。
しかし、彼の名前でもわたしの名前でも予約は入っていないと言われた。
お金を渡した途端に連絡が取れなくなり、旅館の予約が入っていない時点で裏切られた事は明白だったが、わたしは彼を信じたかった。
いつも彼と会う時は、外かわたしの家だった為、彼の家には行った事がなかったが、住所は聞いていた為、その住所を頼りに彼に会いに行ったのだが、アパートに住んでいると聞いていたはずのその住所にあったのは、"田中"という表札がかかった一軒家だったのだ。
そこでわたしは、もう"騙された"と思わざるを得なかった。
彼はきっと、わたしとは遊びで付き合っていたのだろう。
だから、きっと嘘をついてお金を騙し取って、簡単に裏切って姿を消したのだ。
わたしはどしゃ降りの中、傘も無くずぶ濡れになりながら歩いて帰った。
不思議と涙は出なかった。
裏切られるのなんて慣れている。
今までずっと、そうだったから。
わたしがつまらない女だから、本気にしてもらえず、遊び感覚でしか付き合ってもらえないんだ。
わたしには恋愛は向いてないんだ。
こんなに傷に傷を増やしていくだけなら、もう恋なんてしない。
好きな人に裏切られ、騙されるのは、もう懲り懲りだ。



