「、、、また騙された。」
わたしはある一軒家の目の前に立ち尽くして呟いた。
そう呟いた途端に雨が降り出した。
小雨なんてもんじゃなく、どしゃ降りの雨だ。
それは、まるでわたしの代わりに空が泣いているようだった。
わたしは半年前に出会った牧村幸一という同じ年の男性と付き合っていた。
彼は毎日連絡をくれる程にマメで、独占欲の強い人だった。
そんな彼が一ヵ月前に「二人で旅行に行こう。」と言い出し、旅行の計画を立て始めたのだが、彼の方が積極的に色々と探したり、調べたりして動いてくれていた。
旅行を楽しみにしていたわたしは、そんな彼を頼もしく感じていた。
そしてある日、彼が「先に全部、俺が立て替えて払っておいたけど、いつお金払える?」と言い出した。
元々、旅費は折半にすると言ってはいたのだが、「いくら払えばいい?」と訊いたところ「10万」と言われ、わたしは驚いた。
その時のわたしは彼の言葉を信じ切っていて、そんな大金を立て替えてくれているなんて、早く返さなきゃ!と思い、その次の日には銀行から貯金をおろして来て、彼に10万円を渡した。
その途端、彼と連絡が取れなくなった。
いくらLINEをしても既読にすらならず、電話にも出ない。
わたしは「仕事が忙しいんだ。」と彼を信じ、一週間待ったが音沙汰は全く無かった。



