神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

学校見学を終えた後。

俺とシルナは、再びファニレス王城の客室に連れ帰られた。

「お疲れ様でございました。シルナ様。羽久様」

客室までは、いつも通りシディ・サクメが案内してくれた。

…もう覚えちゃったから、別に案内してくれなくて良いぞ。

「大変貴重なご意見を賜ったと聞いております。ありがとうございました」

「…」

「お疲れでしょう。今、飲み物でも…」

「…結構だよ」

この国の連中は、どうにも俺達に飲み物を飲ませたがるな。

そんなお茶ばっか要らねーし。欲しかったら自分で淹れるよ。

「左様ですか。では、ゆっくりおくつろぎください」

「…」

「何か用件がありましたら、いつでも私に…」

「なぁ、あんた」

「はい」

この際だから、聞かせてもらおう。

「…本気なのか?イシュメル女王は」

「…何の話でしょう」

とぼけてんじゃねぇぞ。分かってる癖に。

「本気で、ルーデュニア聖王国に宣戦布告するつもりなのか」

俺とシルナが、望んでもいないのに何日もこの国に留まっているのは。

イシュメル女王の、その脅しがあるからだ。

「あなた方が、この国に亡命してくれなければ…いずれ、そうなるでしょうね」

…こいつ、いけしゃあしゃあと。

「理不尽だと思わないのか?道理に反してると思わないのか」

他国に亡命するかどうかなんて、他人が勝手に決めることじゃないだろ。

しかし。

「それが女王陛下のご意思なら、私はそれに従うだけです」

「…女王の犬めが」

「何と言われても結構です。私は、誇り高きキルディリア魔王国の上級魔導師ですから。女王陛下のご意思に従う義務があるのです」

あぁ、そうかよ。

あのキルディリア国立魔導師学校では、あんたみたいな便利な犬を育ててるんだろうな。

「あなた方も、仮にも魔導師であるならば、魔導師らしく振る舞うべきだと、私は思います」

むしろ、俺達に説教かまして来やがった。

「魔法が使えるってだけで偉そうに振る舞って、非魔導師を虐げるのが『魔導師らしさ』なんだったら…俺はそんなもの要らないね」

「なんと言おうと、あなたもまた魔導師です」

そりゃまぁそうなんだけど。

「キルディリア魔王国は、優秀な魔導師を歓迎します。ルーデュニア聖王国より、遥かに高待遇で」

俺は別に、ちやほやされたい訳じゃない。

「それに、キルディリア魔王国では高度な魔導科学の研究も出来ます。キルディリア国立魔導師学校の在り方が気に入らないのなら、新たに魔導師学校を創設することも、女王陛下は許してくださっています」

「…」

「どうか、賢明なご判断を」

この国で新しく、快適に暮らしていける環境は整えてやる。

欲しいものがあるなら、何でも用意してやる。ルーデュニア聖王国から持ってきても良い。仲間を連れてきても。

だから、それで納得しろと。

ルーデュニア聖王国のことも、イーニシュフェルト魔導学院のことも諦めろと。

あぁ、それは確かに好条件だとも。

…だけどな。






「…諦められるワケ、ないだろ」

俺は、強く拳を握り締めた。