神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

その後俺達は、案内役に学校の設備や、カリキュラムの計画書などを見せられた。

こんなもの、軽々しく他国の人間に見せて良いものじゃないと思うのだが。

しかし案内役は、俺達に惜しげもなくそれを見せた。

そして、俺達に意見を求めてきた。

どうやら、シディ・サクメから、「お客人に包み隠さず、何でも相談するように」と言われているらしい。

「どうでしょう?ルーデュニア聖王国と比べて」

「え…えぇと…」

…そう聞かれてもな。

キルディリアとルーデュニアでは、あまりにも魔導師の在り方が違っていて。

同じ天秤に乗せて比較することが出来ないんだが?

「これが、来年度の小等部のカリキュラム一覧なんですが…。イーニシュフェルト魔導学院と違うところは?」

「あ、いや…。うちは、中等部からだから…」

「そうですか。では…。…こちらが中等部のカリキュラムです」

ど、どうも。

それ、簡単に人に見せちゃって良いのか?

「どうでしょう?イーニシュフェルト魔導学院と比べて。劣っていると思いますか?」

「…劣ってるってことはないと思うよ…」

あれだけ過酷な勉強地獄を強いておいて。

これ以上、生徒達に無理をさせる訳にはいくまい。

むしろ、これは…。

「…詰め込み過ぎだよ。もう少しペースを緩めた方が良いんじゃないかな…」

他校のカリキュラムのことなんて、いちいち口を挟む義理はない。

だけど、シルナは思わず、そう口にしていた。

シルナのことだ。キルディリアの生徒が、過酷な授業を強いられているのが気の毒になったのだろう。

少しでも負担を減らしてやる為に、そう意見したのだ。

「これじゃあ、休む暇もないよ…」

「休む必要がありますか?勉強に使える時間は限られています。休んでいる暇はないと思いますが」

イレースでさえ、適度に休憩は挟んでくれるぞ。

鬼だな。本物の鬼教官だ。この人は。

「必要だよ。これじゃあ、生徒は自分で考える時間がない。教えられたことだけを墨守するロボットと同じだよ」

と、シルナ。

「偉大な発見は、いつだって、自由な発想と創意工夫の末に生まれるんだ。教えられたことを学んでるだけじゃ、自分で考えるということが出来なくなる」

…その通り。

生徒の好奇心、生徒が自ら学ぶ意欲。

これを奪い取ってしまったら、新たな発見は見つからない。

魔導科学とは、常に進化し、発展していくべきものなのだ。

それなのに、教科書をなぞるだけの魔導師では、これ以上の進歩は有り得ない。

「余暇の時間は必要だよ。適度にね…」

「…成程。大変参考になるご意見をありがとうございます」

「…分かってもらえたなら光栄だよ」

果たして、このシルナの意見が反映されるのか。

この学校の現状を見た限りでは、あまり芳しくなかった。