神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

あまりの頑なな態度に、シルナも言葉を失っていたが。

「私の両親も上級魔導師です。二人は、娘の私にも上級魔導師になって欲しいと思っているはずです」

「…そ、そうなの…?」

「はい。ですから、会えなくて寂しいなどとは思っていないはずです。そのような余計なことを考えている暇があったら、少しでも勉学に励むようにと」

「…」

「私もまた、このキルディリア国立学校を卒業して、必ず上級魔導師になってみせます。それが私に出来る最大の親孝行だと信じています」

「…そっか」

それもまた親心、なんだろうか。

果たして本当にそうだろうか。

別に上級魔導師になんかならなくて良いから、自分の目の届くところで育てたい。

親の手で守り、育て、愛情を注いでやりたい。

…それが親心ってものじゃないのだろうか。

俺には子供がいないし、親もいないから、親の気持ちは分からないけど…。

…でも、このくらい強い意志と、覚悟がないと。

この学校では、生き残れないということなのだろう。

それから俺達は、図書室にいた別の生徒、児童にも声をかけた。

中学生も高校生もいたし、小学生もいた。

彼らにシルナは、似たような質問を繰り返した。「寂しくはないのか」と。

だけどみんな、判を押したように同じ答えだった。

「寂しくはない」と。「家族も自分がこの学校を卒業することを望んでいるはずだ」と。

強がっているのではなく、心の底からそう思い込んでいる、という口調なのだ。

彼らの言葉の端々に、「私は『あの』キルディリア国立魔導師学校の生徒なのだ」という、確固たる誇りを感じた。

だからどんな辛いことにも耐えてみせるし、それが国に忠義を果たすことに繋がる。

魔導師としての勉強だけじゃない。

ここにいる生徒達は、相当、強引な情操教育を受けている。

自分達は、誇り高いキルディリア魔王国の魔導師である、と。

魔導師でなければまともな人権も保障されず、しかも上級魔導師となれば、一生、地位と名誉を約束される。

だから何としても、彼らは上級魔導師になりたがる。選ばれた狭き門に、何とか滑り込む為に。

それが家族への、そして国家への、最高の奉公になると信じて。

…魔導師でなければ、生きている価値もないという考えの国だ。

そこで生まれ、育った彼らにとっては、これが当たり前なのだろう。

そんな彼らの意思を否定はしない。彼らなりに苦しんでいるだろうし、毎日必死なんだろうから。

だけど、認めることは出来なかった。

正しいことだとも思えなかった。

だって、魔導師だろうが魔導師じゃなかろうが、同じ人間なのに。

どうして、魔法が使えるか否かで、ここまで露骨な差別を受けなければならないのか。

俺には到底、理解が及ばなかった。