神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

「こちらは、ルーデュニア聖王国から視察に来たお客様だ」

案内役が、女子生徒に俺達のことをそう説明した。

そして、案内役はくるりとこちらを向き。

「どうぞ。何でも、聞きたいことがあれば何なりと」

「あ…あぁ…」

…と、言われてもな。

俺は頭をフル回転させて、質問を考えた。

「えっと…。…今、何年生なんだ?」

出てきたのは、そんなつまらない質問だった。

しかし。

「中等部二年です」

その女子生徒は、律儀に答えてくれた。

二年生か…。ってことは、すぐりと同い年だな…。

まだあどけない顔をしているはずの年頃だが、すぐりと同じように目が据わっていて、とても子供のように見えなかった。

「そうか…。中学二年生…」

俺は、彼女が自主勉強していた机の上に視線を移した。

中学二年生とは思えないほど、高難度の魔導書を読み込んでいたようだ。

見たところ、あれは風魔法の魔導書だな。

…ってことは…。

「…風魔法が得意なのか?」

「いいえ」

えっ。

てっきり、得意だから勉強しているのだとばかり。

「不得意です。だから、こうして少しでも空いた時間に予習、復習するようにしています」

「あ…そうなのか…」

苦手だから勉強する。成程。

偉いな。苦手な分野って、なかなか自分から勉強しようとは思えないものだぞ。

「勉強熱心なんだな…」

「この程度、我が校の生徒なら当然のことです。褒められることではありません」

折角称賛の言葉をもらったというのに、女子生徒は少しも嬉しそうな顔をすることはなく。

むしろ、きっぱりと否定した。

そ、そうか…。

「…親御さんは?何処に住んでるの?」

シルナが、女子生徒に尋ねた。

シルナはどうも、生徒が寂しがっていないかを心配しているようだ。

女子生徒は答えたが、それは王都ファニレスから遠く離れた地方都市だった。

…そんな遠くから…。

それじゃ、なかなか会いにも来てもらえないだろう。

「そうなんだ…。…じゃあ、寂しいでしょう」

「そんなことはありません」

えっ。

「上級魔導師になる為に必要なことです。無事にこの学校を卒業するまでは、絶対に帰れません」

「…」

…強がっているようには聞こえない。

心から、そう思っているように聞こえる。

「そうなの…?」

「はい。その為に全力を尽くしています。私も誇り高いキルディリア魔導師の卵として、決して努力は惜しまないつもりです」

「…」

…まるで、軍人の模範解答みたいだな。

「だけど、ご両親はきっと…。…君になかなか会えなくて、寂しがってると思うよ」 

「いいえ、そんなことはありません」

寂しければ、素直に「寂しい」と言えば良いのに。
 
頑なに、彼女はそれを認めなかった。