神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

俺達はその日、シディ・サクメに連れられ。

王都ファニレスにある、魔導師養成学校とやらの視察に向かった。

拘束されていた訳じゃない。手錠をかけられた訳でも、ナイフを突きつけられた訳でもない。

俺達が寝起きしている客室には、鍵さえかけられていなかった。

だけど、見張りも、監視も、拘束も必要ない。

俺達は、一切抵抗することは出来なかった。

だって、俺達が逆らえば、隠れてルーデュニア聖王国に逃げ帰るような真似をすれば。

今後は、ルーデュニア聖王国に牙を向けられる。

祖国を、そこにいる大切な人々を守る為に。

俺もシルナも、イシュメル女王の命じるまま、従順な奴隷でいるしかなかった。

この2週間以上の間、俺が、シルナが、どれほど葛藤し、どれほど耐え難い精神的苦痛を味っているか。

その思いは、筆舌に尽くし難い。

現状は、ルーデュニア聖王国に帰るどころか、連絡を取ることも許されていなかった。

…なかなか帰ってこない俺達のことを、仲間達はきっと心配してるだろうな。

それとも、「絶対に帰ってくる」と信じて待ってくれているのだろうか。

出来ることなら、俺だってそうしたい。

だけど、今のところ、俺達が安全にこの国を脱出出来る手段はなかった。

それどころか、こうして、イシュメル女王やシディ・サクメの言いなりになるしかないのだ。

自分が情けなくて仕方なかった。

きっと、シルナも俺と同じ思いでいるに違いない。







「…こちらです」

ぼうっとしている間に、例の魔導師養成学校とやらに到着した。

…ここが。

博物館だの歴史資料館だのには、まったく興味が沸かなかったが。

魔導師養成学校と聞くと、どうしても反応せずにいられない。

…イーニシュフェルト魔導学院の教師仲間達は、生徒達は、今頃どうしているだろう?

「…羽久様?」

「あ、いや…」

俺がボケーっとしているのを見て、サクメが声をかけてきた。

「どうでしょう。我が国が誇る、最高峰の魔導師養成学校…。キルディリア国立魔導師学校です」

「…ふーん…」

自慢げなことで。

そのキルディリア国立魔導師学校、とやらは。

イーニシュフェルト魔導学院の校舎とまったく同じだけど、一回りも二回りも大きくて。

高いコンクリートの壁に囲まれた、さながら要塞みたいな学校だった。

とても学校には見えないが…。

「…外だけ見せられてもな…」

「勿論、中に入って見てもらいます。…こちらに」

あ、そう…。

俺達はサクメに連れられて、魔導師学校の校舎の中に足を踏み入れた。