いくらイシュメル女王が、「転職」先で好条件を約束してくれたって。
平気で人を苦しめるような…そんな国に、移住したいとは思わない。
ましてや、現在進行系で戦争をやってる国に。
「イシュメル女王。何度誘われても、何度頼まれても、私は自分の国から離れないよ。あの国には、私が培ってきた全てがあるんだ」
そうだ。
シルナは、俺と…いや、正しくは「前の」俺と…平穏に生きていく為に、その住処としてルーデュニア聖王国を建国し。
そして、故郷の名を冠するイーニシュフェルト魔導学院を作り…そこに根付いて生きてきた。
今に至るまでずっと、守り続けてきたのだ。
時には辛いことも、悲しいこともたくさんあった。耐えられないと思うことも。
だけど俺達はいつだって、あの場所で、時に血を流し、涙を流し、懸命に生きてきた。
これからも、その生き方を変えるつもりはない。
「だから、もう私達をルーデュニア聖王国に帰らせて。フユリ様からのお返事は伝えた。…もう、充分だよね?」
「…」
イシュメル女王は扇で半分顔を隠し、じっとシルナを見つめていた。
…ここまで言われてもなお、まったく怯むことのない態度は立派なものだが…。
「…そうか」
たっぷりと間を開けて、イシュメル女王が呟いた。
「…残念じゃよ。ここまで言ってもまだ、聞き入れてくれなんだとは…」
「…」
「どうあっても、考えを変える気はないということじゃな」
シルナは頷き、俺も同じように頷いた。
すると。
途端に、イシュメル女王は敵意の眼差しをこちらに向けた。
…!
マズい、と思った時には遅かった。
王の間に、王宮の近衛兵達がなだれ込み。
ずらりと並んで、俺達を取り囲んだ。
あらかじめ、こうなることが分かっていたかのように。
俺は、慌てて立ち上がったが…。
「動くな」
「…っ…!」
俺達を取り囲んでいるのは、金色の証明書をぶら下げた上級魔導師達だった。
いくら俺とシルナでも、この数の魔導師を相手にするのは不利だった。
「…これは何のつもり?」
狼狽える俺に反して、シルナは静かだった。
静かに、冷静にそう尋ねた。
「抵抗するな。わらわは、おぬしらを傷つけたくはない」
取り囲んでおきながら、何言ってるんだ。
やる気満々じゃないかよ。
「…ここで私達を無事に返さなかったら、国同士の問題になると思うけど?」
「分かっておる。だからこそ、穏便に済ませようではないか」
と言って、イシュメル女王が立ち上がった。
穏便って、今更何を…。
「手荒な真似はしたくない。アーリヤット皇国との戦いに加え、これ以上敵も増やしたくはない。だから、賢明な判断を頼むぞ」
「…何を…」
「聖賢者シルナ・エインリー殿。そして羽久・グラスフィア殿。おぬしらは、この場で我がキルディリア魔王国に亡命せよ」
「…!?」
どうして。何でそんなことを。
しかし、本当に俺を驚かせたのは、イシュメル女王の次の言葉だった。
「さもなくば…おぬしらが断るならば、わらわはルーデュニア聖王国に宣戦布告する」
「…!」
「愛する祖国を守りたいなら、わらわに屈せよ」
平気で人を苦しめるような…そんな国に、移住したいとは思わない。
ましてや、現在進行系で戦争をやってる国に。
「イシュメル女王。何度誘われても、何度頼まれても、私は自分の国から離れないよ。あの国には、私が培ってきた全てがあるんだ」
そうだ。
シルナは、俺と…いや、正しくは「前の」俺と…平穏に生きていく為に、その住処としてルーデュニア聖王国を建国し。
そして、故郷の名を冠するイーニシュフェルト魔導学院を作り…そこに根付いて生きてきた。
今に至るまでずっと、守り続けてきたのだ。
時には辛いことも、悲しいこともたくさんあった。耐えられないと思うことも。
だけど俺達はいつだって、あの場所で、時に血を流し、涙を流し、懸命に生きてきた。
これからも、その生き方を変えるつもりはない。
「だから、もう私達をルーデュニア聖王国に帰らせて。フユリ様からのお返事は伝えた。…もう、充分だよね?」
「…」
イシュメル女王は扇で半分顔を隠し、じっとシルナを見つめていた。
…ここまで言われてもなお、まったく怯むことのない態度は立派なものだが…。
「…そうか」
たっぷりと間を開けて、イシュメル女王が呟いた。
「…残念じゃよ。ここまで言ってもまだ、聞き入れてくれなんだとは…」
「…」
「どうあっても、考えを変える気はないということじゃな」
シルナは頷き、俺も同じように頷いた。
すると。
途端に、イシュメル女王は敵意の眼差しをこちらに向けた。
…!
マズい、と思った時には遅かった。
王の間に、王宮の近衛兵達がなだれ込み。
ずらりと並んで、俺達を取り囲んだ。
あらかじめ、こうなることが分かっていたかのように。
俺は、慌てて立ち上がったが…。
「動くな」
「…っ…!」
俺達を取り囲んでいるのは、金色の証明書をぶら下げた上級魔導師達だった。
いくら俺とシルナでも、この数の魔導師を相手にするのは不利だった。
「…これは何のつもり?」
狼狽える俺に反して、シルナは静かだった。
静かに、冷静にそう尋ねた。
「抵抗するな。わらわは、おぬしらを傷つけたくはない」
取り囲んでおきながら、何言ってるんだ。
やる気満々じゃないかよ。
「…ここで私達を無事に返さなかったら、国同士の問題になると思うけど?」
「分かっておる。だからこそ、穏便に済ませようではないか」
と言って、イシュメル女王が立ち上がった。
穏便って、今更何を…。
「手荒な真似はしたくない。アーリヤット皇国との戦いに加え、これ以上敵も増やしたくはない。だから、賢明な判断を頼むぞ」
「…何を…」
「聖賢者シルナ・エインリー殿。そして羽久・グラスフィア殿。おぬしらは、この場で我がキルディリア魔王国に亡命せよ」
「…!?」
どうして。何でそんなことを。
しかし、本当に俺を驚かせたのは、イシュメル女王の次の言葉だった。
「さもなくば…おぬしらが断るならば、わらわはルーデュニア聖王国に宣戦布告する」
「…!」
「愛する祖国を守りたいなら、わらわに屈せよ」


