神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

キルディリア魔王国にやって来て4日目のその日、俺達は再び、イシュメル女王のもとに呼び出された。

そしてそこで、再び問いかけられた。




「…どうじゃ。考えは変わったか?」

「…考え?」

何のことだよ。

「わらわと共に、勝ち馬乗る気はないか、という話じゃ」

…アーリヤット皇国との戦争のことかよ。

あんた、それまだ諦めてなかったのか。

「何度も言ってるだろ。俺達は戦争をする気はない」

これは俺やシルナだけじゃないなくて、フユリ様のご意思だ。

ちなみに、もうこの頃には完全に、イシュメル女王に敬語で話すのを忘れていた。

「それに、俺達にはイエスと言う権利も、ノーと言う権利もないんだ。それを決めるのはフユリ様なんだから」

俺達は、あくまで代理人。

フユリ様のご意思を伝えに来た、ただのメッセンジャーに過ぎない。

それなのに。

「何を異なことを。魔導師ですらない小娘に、何を決められると言うのじゃ」
 
あんたが自分の国の非魔導師をばかにするのは、あんたの勝手だが。

でも、うちの国の女王様まで、見下すのはやめて欲しいもんだな。

「ではフユリの意思ではなく、おぬしらの意思はどうじゃ」

「…え?」

この質問に、俺もシルナも、思わず面食らった。

「聖賢者殿。わらわが何故、おぬしを名指しで呼びつけたか分かるか?」

「…。…前と同じことを言う為、だね?」

…前と?

それはつまり…シルナが以前、キルディリア魔王国に来た時と同じ…。

「いかにも、その通りじゃ」

「…シルナ。前と同じことって…」

どういう意味か、と聞こうとしたら。

シルナは、非常に固い顔をしていて。

「以前、キルディリア魔王国に来た時…。私はイシュメル女王に、この国で暮らさないかって誘われたんだ」

「…!」

「勿論、断ったけど…。…でも、まだ諦めてなかったんだね」

…イシュメル女王がわざわざシルナを呼んだのは、そのせいだったのか。

シルナを…キルディリア魔王国に…?

「…何をふざけたことを…!」

「何がふざけておるのじゃ?優秀な魔導師がおれば、引き抜きしたいのは当然のことじゃろう」

引き抜き、って…。転職じゃないんだぞ。

「シルナに…ルーデュニア聖王国を裏切れって言うのか?」

「裏切れとは言っておらん。ただ、鞍替えしたらどうかと誘っているだけじゃ。何もルーデュニアでなければならん理由はなかろう」

何が鞍替えだよ。言葉をちょっとマイルドにしたからって、誤魔化せると思うなよ。

そんなの、実質裏切れって言ってるようなものじゃないか。

「どうじゃ。おぬしがキルディリアに来れば、このわらわが最高の待遇を約束するぞ」

「最高の…待遇?」

「ゴールドカードの発行は勿論、住居も、暮らしに必要なものの全ても、わらわが保証しよう。富も名声も思うがままじゃ」

「…」

引き抜きスカウトとしては、そりゃ最高の待遇だな。

この国で、思うがままの優雅な生活が出来ると。

それはそれは…魅力的な話じゃないか。