神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

「今日はお二人に、ファニレスにある国立魔導師養成学校の視察をお願いしたいと思っております」

…何が視察をお願いしたい、だ。

白々しい顔をして…。

「よろしいですか?」

「…よろしくなくても、連れて行くつもりなんだろ?」

「…理解が早くて助かります」

もうこの人、脅しを隠さなくなったな。

…だけど、俺にもシルナにも、抗う術はなった。

どれほど行きたくなくても、サクメが「行く」と言えば、ついていかない訳にはいかない。

昨日は博物館。その前は図書館。

更にその前は歴史資料館で、その前は美術館だった。

毎日毎日、国内の違うところに、視察とか見学とかいう名目で連れて行かれ。

かと思えば、城に俺とシルナに会いたいと言って、次から次へと客がやって来る。

いずれも、金カード持ちの上級魔導師達だ。

この国に来て最初の夜、歓迎パーティーで顔を合わせた面々が、俺達を訪ねてきては。

魔導科学に関する研究の知見を聞かれたり、魔導科学に関する議論を交わしたり、

あるいは単に彼らの家に招かれて、お茶や夕食を共にすることもあった。

そんな呑気なことをしている場合じゃないということは、俺達が一番よく分かってる。

だけど…俺には、どうすることも出来なかったのだ。

俺はこの頃既に、自分達がとんでもない罠にハマってしまったことを自覚していた。

俺達は最早、この国に閉じ込められている。

そもそも、最初からそのつもりだったのだろう。

こうやって、毎日俺達をこの国に案内して…この国の人々と交わらせて。

そうして、俺とシルナが折れるのを待っている。

この国の一員となることを、早く受け入れるように、と。








…最初にその誘いを受けたのは、この国に来て4日が経過した頃だった。

あの時点で俺は既に、イシュメル女王との話し合いは無理だと思っていた。

いくら説得しようとしても、イシュメル女王は自らの持論を変えるつもりはない。

ならば、交渉は決裂だ。

ルーデュニア聖王国は戦争には加担しない。その返事だけを伝え。

俺とシルナは、さっさとキルディリア魔王国から退散するつもりだった。

…それなのに…。