神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

シルナ学院長先生と羽久さんが、キルディリア魔王国に行ってしまってから、はや2週間が経過した。

予定ならば、そろそろ帰ってきても良い頃だ。

それなのに、彼らは未だに帰ってくる気配を見せない。

それどころか、キルディリア魔王国に旅立ってしまってから、便りの一枚もないのだ。

僕達が心配になるのも、当然というものだろう。

…どうしてるんだろうな。二人共…今。

生きて、元気でいるなら良い。

だけど…もし…。…もしも、万が一のことを考えてしまうと。

どうしても、心配で何も手につかない。

「大丈夫ですよ、天音さん」

「…ナジュ君…」

僕の心を読んだナジュ君が、すかさずそう言った。

「学院長は、羽久さんと一緒にいるんですよ。一人じゃないんです。心配要りませんよ」

「…そうだけど…」

「そもそも、心配してるの天音さんだけですよ」

「えっ」

そ…。

…そうなの?

僕は、驚いて職員室の中を見渡した。

てっきりここにいるみんな、二人のことを心配して、

「私が心配しているのは、今後の授業計画のことだけです」

イレースさんが、きっぱりと言った。

えぇぇ…。

「あの二人がいないことによって、授業に遅れが出てるんですよ。まったく迷惑な…」

そんなぁ…。

授業が遅れるのも困るけど、二人の安否の心配をしてあげようよ…。 

「…マシュリさんは?マシュリさんも心配してないの…?」

「冥界にまで僕の心臓を取りに来た人達が、小さな島国ごときで命を奪われるはずがないよ」 

…うぐ。

そう言われると…確かに…そうなんだけど。

「どんな極悪な国だろうと、ジャマ王国よりマシでしょ」

「僕もそう思う」

すぐりさんと令月さんまで。

「しばらくすれば、何事もなかったように戻ってくるよ。きっと」

「…ね、天音さんだけだったでしょ?」

「…」

…みんな、もうちょっと心配してあげようよ。

それだけ信頼していると言えば、そうなんだけど。

「…一応、聖魔騎士団の方から、キルディリア魔王国政府に問い合わせをしているそうですけどね」

「返事…まだ、来てないんだよね?」

「そうみたいですね」

「…」

僕だって、学院長のことも、羽久さんのことも信頼してる。

だけど…嫌でも、悪いことを考えてしまう。

あの二人も…以前のフユリ女王様みたいに。

フユリ様がミナミノ共和国に閉じ込められたように、二人もキルディリア魔王国に閉じ込められているんじゃないか、って…。

「…例えそうだったとしても」

ナジュ君が、僕の言葉を紡ぐように言った。

「必ず帰ってきますよ。あの二人なら」

「…ナジュ君…」

「潜り抜けてる修羅場が違いますからね」

…そうだね。

みんながそうするなら…僕も、信じて待つよ。

そして、もし二人がSOSを求めてきた時には、すぐに駆けつけられるように備えておこう。

だから。

「…早く帰ってきてね」

みんな、首を長くして待ってるから。