神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

…すると、そこに。

「やっほー。ちょっと邪魔するよー」

「あれ、まだみんな残ってたんだ」

元暗殺者組の、すぐりさんと令月さんがやって来た。

…窓から。

…この二人にとっては、窓も立派な玄関なんだろうなぁ。

「あなた達。何しに来たんです。もう下校時刻は過ぎてますよ」

じろっ、と睨むイレースさん。ひぇっ。

しかし、睨まれた二人は、けろっとしていて。

「罠、仕掛けに来たんだ」

と言った。

わ…罠…?

「令月さん…。罠って、何…?」

「職員室に不審者が入ってきたら発動するように」

「とりあえず、窓と入り口は当然として…。床下と天井裏…あとは壁裏かなー」

「『八千歳』、壁裏と天井裏は任せても良い?」

「しょーがないなー」

二人は、僕達の目の前で、カチャカチャと罠を仕掛け始めた。

…針とか、マキビシみたいなのも仕込んでるんだけど。

それ、僕達には発動しないよね?うっかりマキビシ踏んじゃったら、痛いじゃ済まないよ。

「痛いで済まないどころか、命にも関わりかねませんよ」

僕の心を読んだナジュ君が、真面目な顔で言った。

「えっ…」

「あれ、全部毒が塗ってあるそうです」

「…」

…僕、職員室の窓と入り口には注意しよう。

あと床と天井と壁と…って、それじゃ安心して職員室に入れないよ。

「よし、設置完了」

「これで安心だねー」

二人はものの数分で、あっという間に罠を仕掛け終わった。

仕事が早い。

しかも、罠を仕掛けたというのに、職員室の見た目にはまったく変化がなくて。

これじゃあ、何処に罠を仕掛けたのか分からないよ。

「グラウンドや校舎の罠も強化したし。これで大丈夫かな」

「そーだね」

そ、そんなことまでやってたの?

「どうして…。いきなりそんな…」

罠なんて仕掛けなくても。

うっかり生徒達が罠にかかったらどうしよう。危ないよ。

「だって、何が起こるか分からないでしょ?」

「備えあれば憂いなし、ってねー」

「…それは…」

…そう、なんだけど。

気持ちは分かる。

令月さんとすぐりさんが、何で学院内の罠を強化したのか、その理由も分かる。

ここ最近、イーニシュフェルト魔導学院では、不穏な雰囲気が漂っている。

それが原因なのだ。

「あなた達。罠を仕掛け終わったのなら、こっちの仕事を手伝いなさい」

あろうことか。

イレースさんは、マシュリさんののみならず、令月さんとすぐりさんまでに、事務仕事を言いつけた。

イレースさん…。二人は生徒なんだよ、一応…。
 
しかしイレースさんにとっては、令月さんとすぐりさんも、猫の手と同じ扱いだった。

「もー。しょーがないなー」

「何すれば良いの?」

そして令月さん達も、断らないんだよね…。

こういうところは、素直で良いと思うんだけど…。