「君は魔導師のことを、神様か何かだと勘違いしている。でも私達は神様じゃない。間違うことも、失敗することも、迷うことだってある」
…その通りだ。
特にシルナの優柔不断さは、毎度イレースに舌打ちされてるくらいだからな。
「羽久が私に失礼なことを考えてる気がする…」
「良いから」
「…とにかく、私達は神様じゃないんだよ。確かに魔法は使えるけど。それ以外は普通の人間と変わらない。何も特別な存在なんかじゃないんだ」
と、シルナは自分の考えを語った。
それをイシュメル女王は、扇で口元を隠しながらじっと聞いていた。
「私はこれまで、色んな人に会ってきたよ。魔導師にも、魔導師じゃない人にも。魔導師でも意地悪で冷たい人はいるし、魔導師じゃなくても優しくて親切な人はいる」
「…」
「人の多様性や可能性、価値観を、魔法が使えるかどうかだけで判断するのは、あまりに視野が狭いんじゃないかな」
仮にも一国の女王相手に、「視野が狭い」と言い切るとは。
シルナでなきゃ、とても言えない言葉だな。
言葉の重みが違うんだもん。
「…それにね、今は、その体制で上手く行ってるかもしれないけど。これから先もずっとそうなるとは限らないよ」
「…どういう意味じゃ?」
「君達のやってることは、かつてイーニシュフェルトの里で行われていたことに似てるんだ」
シルナ…。
何もそこまで言わなくても、と思ったが…。
「優れた魔導師である自分達だけが特別だと思い込んで、里の外の人々を見下していた…。人々は自分達優秀な里の魔導師が率いる必要があるって、当たり前のように考えていた」
「…」
「だけど、その結果どうなった?今はもう、イーニシュフェルトの里は何処にもない」
俺にとっても他人事ではない話だ。
そして、イシュメル女王にとっても…。
「過ぎた支配も、抑圧も、そして驕りや優越感も、いずれ一つの大きな悲しみに変わる。その後には何も残らない」
「…つまり、我が国もイーニシュフェルトの里と同じ運命を辿ると?」
「そうなるかは分からない。でも、このままの在り方じゃ、この国には良い未来は見えない」
今日のシルナは、いつもの優柔不断さが嘘のように、はっきりとした口調で言った。
…俺もそう思う。
「人が人を傷つけて良い理由なんてないんだよ。…誰であっても」
という、シルナの真っ当な持論を。
イシュメル女王は、じっと黙って聞いていたが。
しかしその顔を見れば、彼女が納得していないのは明らかだった。
…そりゃそうだよな。
そう簡単に説得出来るのなら、苦労しない…。
「…そうか。おぬしがそう思うのなら、それでも良かろう」
何だその言い方は。
お前はそう思うのか。私はそうは思わないけどね。みたいな。
「つまり、我らと志を同じくするつもりはないと?」
「それが、フユリ様のご意思ですから」
「…そうか」
失望した様子だったが、俺達がそう答えることも、ある程度は予測していたのだろう。
必要以上に取り乱すことはなく、それは傍らのシディ・サクメも同様だった。
…その通りだ。
特にシルナの優柔不断さは、毎度イレースに舌打ちされてるくらいだからな。
「羽久が私に失礼なことを考えてる気がする…」
「良いから」
「…とにかく、私達は神様じゃないんだよ。確かに魔法は使えるけど。それ以外は普通の人間と変わらない。何も特別な存在なんかじゃないんだ」
と、シルナは自分の考えを語った。
それをイシュメル女王は、扇で口元を隠しながらじっと聞いていた。
「私はこれまで、色んな人に会ってきたよ。魔導師にも、魔導師じゃない人にも。魔導師でも意地悪で冷たい人はいるし、魔導師じゃなくても優しくて親切な人はいる」
「…」
「人の多様性や可能性、価値観を、魔法が使えるかどうかだけで判断するのは、あまりに視野が狭いんじゃないかな」
仮にも一国の女王相手に、「視野が狭い」と言い切るとは。
シルナでなきゃ、とても言えない言葉だな。
言葉の重みが違うんだもん。
「…それにね、今は、その体制で上手く行ってるかもしれないけど。これから先もずっとそうなるとは限らないよ」
「…どういう意味じゃ?」
「君達のやってることは、かつてイーニシュフェルトの里で行われていたことに似てるんだ」
シルナ…。
何もそこまで言わなくても、と思ったが…。
「優れた魔導師である自分達だけが特別だと思い込んで、里の外の人々を見下していた…。人々は自分達優秀な里の魔導師が率いる必要があるって、当たり前のように考えていた」
「…」
「だけど、その結果どうなった?今はもう、イーニシュフェルトの里は何処にもない」
俺にとっても他人事ではない話だ。
そして、イシュメル女王にとっても…。
「過ぎた支配も、抑圧も、そして驕りや優越感も、いずれ一つの大きな悲しみに変わる。その後には何も残らない」
「…つまり、我が国もイーニシュフェルトの里と同じ運命を辿ると?」
「そうなるかは分からない。でも、このままの在り方じゃ、この国には良い未来は見えない」
今日のシルナは、いつもの優柔不断さが嘘のように、はっきりとした口調で言った。
…俺もそう思う。
「人が人を傷つけて良い理由なんてないんだよ。…誰であっても」
という、シルナの真っ当な持論を。
イシュメル女王は、じっと黙って聞いていたが。
しかしその顔を見れば、彼女が納得していないのは明らかだった。
…そりゃそうだよな。
そう簡単に説得出来るのなら、苦労しない…。
「…そうか。おぬしがそう思うのなら、それでも良かろう」
何だその言い方は。
お前はそう思うのか。私はそうは思わないけどね。みたいな。
「つまり、我らと志を同じくするつもりはないと?」
「それが、フユリ様のご意思ですから」
「…そうか」
失望した様子だったが、俺達がそう答えることも、ある程度は予測していたのだろう。
必要以上に取り乱すことはなく、それは傍らのシディ・サクメも同様だった。


