イシュメル女王は、ぞっとするような冷たい目をしていた。
「おぬしらはすぐにそれじゃ。魔導師も、非魔導師も、同じ人間だと言う」
「…当たり前のことだろ?」
「違うな。まったく違う。魔導師には力がある。しかし、非魔導師には力がない。それは変えようのない、絶対的な違いじゃ」
…。
「非魔導師に出来ることは、魔導師にも出来る。しかし魔導師に出来ることは、非魔導師には出来ない。所詮、種族が違うのじゃよ」
「それはそうだが…。でも、だからって…」
差別して良い訳じゃないだろ。
魔導師の中にだって差はある。大きな魔法を使える者、小さな魔法しか使えない者…。
彼らはお互いに支え合って、互いに足りないところを補い合って生きていく。
それが当たり前の、人の世というものだろう。
「人を差別するのは悪い、か。…まぁ良いじゃろう。仮に、おぬしの言う通りだとして」
仮じゃなくても、俺の言う通りだろうよ。
「おぬしも、我が国の歴史を知っておろう」
「えっ…」
突然の問いかけに、俺は一瞬口ごもった。
…シルナとシュニィに、掻い摘んで聞いた程度だが。
「我らは昔、この不毛の島に流されてきた。ただ魔法が使えるというだけで、人扱いされなかったのじゃ」
「…そのことは…。…俺も、聞いたけど」
「我らはその時の屈辱を忘れてはいない。魔導師というだけで苦しめられた、辛い歴史を乗り越えてきたことを」
「だからって…。だからって、今度は自分達を苦しめた人々に復讐をするのか?」
差別されたから、差別し返して。
かつて自分達が味わった苦しみを、別の人に押し付けて。
そんな負の連鎖を、永遠に繰り返すつもりなのか。
「憎しみは憎しみを生むぞ。今は非魔導師の人々も、あんたらの言いなりになってるかもしれない。だけど、憎しみが反抗を呼ぶ日が来る」
「好きにすれば良いわ」
イシュメル女王の返事は、そつないものだった。
…何?
「憎しみが反抗を呼ぶ?やれるものならやってみよ。魔法も使えない非力な連中が、魔導科学の粋を極めたわらわ達魔導師に、何が出来る?」
はんっ、と鼻で笑うような態度。
「群れて竹槍の練習でもしているのが精々じゃろう。反乱を起こしたいなら好きにすれば良いわ。国内から非魔導師を一人残らず殲滅する、良い口実になる」
あろうことか。
自分の国の民を…殲滅する口実になる、なんて…。
「良いか、どんなに人の形をしていても、魔導師と非魔導師には埋められない高い壁があるのじゃ。非魔導師が種族として、我らよりも遥かに劣った存在であることは明白」
「…」
「劣った種族を、秀でた種族が管理するのは当然のことじゃろう」
自分達魔導師こそが優れていて、その他は劣っている。そう信じて疑っていない。
その圧倒的な傲慢さに、俺は言い返す言葉を失ってしまった。
この人は、この歪んだ価値観に囚われている。
俺がどんな言葉を使ったって、考えを変えることは少しも…。
「…私は、そうは思わないよ」
「…シルナ」
言葉が思いつかなかった、俺に代わって。
シルナが、ぽつりとそう言った。
「おぬしらはすぐにそれじゃ。魔導師も、非魔導師も、同じ人間だと言う」
「…当たり前のことだろ?」
「違うな。まったく違う。魔導師には力がある。しかし、非魔導師には力がない。それは変えようのない、絶対的な違いじゃ」
…。
「非魔導師に出来ることは、魔導師にも出来る。しかし魔導師に出来ることは、非魔導師には出来ない。所詮、種族が違うのじゃよ」
「それはそうだが…。でも、だからって…」
差別して良い訳じゃないだろ。
魔導師の中にだって差はある。大きな魔法を使える者、小さな魔法しか使えない者…。
彼らはお互いに支え合って、互いに足りないところを補い合って生きていく。
それが当たり前の、人の世というものだろう。
「人を差別するのは悪い、か。…まぁ良いじゃろう。仮に、おぬしの言う通りだとして」
仮じゃなくても、俺の言う通りだろうよ。
「おぬしも、我が国の歴史を知っておろう」
「えっ…」
突然の問いかけに、俺は一瞬口ごもった。
…シルナとシュニィに、掻い摘んで聞いた程度だが。
「我らは昔、この不毛の島に流されてきた。ただ魔法が使えるというだけで、人扱いされなかったのじゃ」
「…そのことは…。…俺も、聞いたけど」
「我らはその時の屈辱を忘れてはいない。魔導師というだけで苦しめられた、辛い歴史を乗り越えてきたことを」
「だからって…。だからって、今度は自分達を苦しめた人々に復讐をするのか?」
差別されたから、差別し返して。
かつて自分達が味わった苦しみを、別の人に押し付けて。
そんな負の連鎖を、永遠に繰り返すつもりなのか。
「憎しみは憎しみを生むぞ。今は非魔導師の人々も、あんたらの言いなりになってるかもしれない。だけど、憎しみが反抗を呼ぶ日が来る」
「好きにすれば良いわ」
イシュメル女王の返事は、そつないものだった。
…何?
「憎しみが反抗を呼ぶ?やれるものならやってみよ。魔法も使えない非力な連中が、魔導科学の粋を極めたわらわ達魔導師に、何が出来る?」
はんっ、と鼻で笑うような態度。
「群れて竹槍の練習でもしているのが精々じゃろう。反乱を起こしたいなら好きにすれば良いわ。国内から非魔導師を一人残らず殲滅する、良い口実になる」
あろうことか。
自分の国の民を…殲滅する口実になる、なんて…。
「良いか、どんなに人の形をしていても、魔導師と非魔導師には埋められない高い壁があるのじゃ。非魔導師が種族として、我らよりも遥かに劣った存在であることは明白」
「…」
「劣った種族を、秀でた種族が管理するのは当然のことじゃろう」
自分達魔導師こそが優れていて、その他は劣っている。そう信じて疑っていない。
その圧倒的な傲慢さに、俺は言い返す言葉を失ってしまった。
この人は、この歪んだ価値観に囚われている。
俺がどんな言葉を使ったって、考えを変えることは少しも…。
「…私は、そうは思わないよ」
「…シルナ」
言葉が思いつかなかった、俺に代わって。
シルナが、ぽつりとそう言った。


