神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

「もう少し雑談に興じたかったんじゃが…。せっかちな男じゃのう」

当たり前だ。

こうしている間も、戦争は続いてるんだぞ。

女王だって他人事じゃない。

俺達がここで、水晶の椅子に座って、水晶のテーブルについている間にも。

キルディリア魔王国の民が、そしてアーリヤット皇国の民が…人の命が、奪われ、傷つけられているんだぞ。

悠長に歓迎パーティーなんてやってる場合じゃなかったんだよ。

「まぁ良い。わらわも、肝心な話をするとしよう…。…それで」

と、改めてイシュメル女王はこちらに向き直った。

「我らの軍に加勢する気はあるのか。ルーデュニア聖王国は」

「…」

「わらわの側につけば、勝ち馬に乗せてやるぞ。戦争が終わった暁には、アーリヤット皇国の資源も、領土も充分に分けてやろう」

…それは有り難い申し出だな。

「アーリヤット皇王…。ナツキとか言ったか。あの男の身柄は、おぬしらにくれてやろう。縛り首にするなり、豚の餌をくれてやるなり、好きにすれば良い」

それを、フユリ様に言うつもりか?

フユリ様とナツキ様が、実の兄妹だと知っていて?

いかにこの人が、ナツキ様に…いや、魔導師ではない人に関心がないか、伺い知れる。

「どうじゃ。悪い話では…」

「フユリ様は、いかなる条件を出されても戦争に参加することはない、とおっしゃいました」

「…」

シルナがきっぱりと答えると、イシュメル女王の表情が曇った。

「私もその意見に賛成です。自国の国民を巻き込み、他国の国民も巻き込み、ましてや人の命を奪う行為は…。いかなる理由があっても、正当化されることではありません」

その通り。よく言った。

…しかし。

「…おぬしがそれを言うか。…皮肉なものじゃな」

「…!」

お前。シルナに…なんてことを。

「おぬしらもつい最近まで、アーリヤット皇国とは睨み合っておったではないか。決闘まで行ったと聞いているが」

「それは…」

「その脅威が去った途端、今度は平和主義者を気取るか。…フユリとかいう女、随分な軟弱者じゃな」

…こいつ、言うに事欠いて。

フユリ様にまで、なんてことを。

「それに、おぬしらは民の命のことを気にしているようじゃが、ならばアーリヤット皇国が提唱した、魔導師保護条約、とやらはどうなる?」

「…!」

「あれが魔導師の権利を奪うものだということを、おぬしらとて知っておろう。あんなものの締結を許すのか?」

勿論、それは許して良いことじゃない。

ナツキ様が提唱した、世界魔導師保護条約。

あれは、魔導師を国の道具として奴隷扱いするという、非人道的な条約だ。

あの条約には、フユリ様も強く反対していた。

一時はナツキ様の策略にハマり、危うく条約が締結するところだったが…。

…それは、アーリヤット皇国との命運をかけた決闘によって、何とか回避した。

しかし…キルディリア魔王国は、黙っていなかった。