神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

それなのに、イシュメル女王は。

「今宵はみな、思う存分聖賢者殿と話をすると良い」

なんて、お客人達に言った。

おいおい…。シルナは芸能人か何かか?

「そうじゃ、聖賢者殿は甘いものがお好きじゃったな」

「え?」

イシュメル女王が、シルナを振り向いて言った。

「ささやかではあるが、我が国名産の菓子をいくつか用意させた。好きに食べると良い」

「こちらに」

「…!」

サクメは、お洒落なアフタヌーンティーで使うような、大きなケーキスタンドを持ってきた。

三段にも及ぶケーキスタンドには、たくさんの種類の美味しそうな菓子が並んでいた。

客室の冷蔵庫の中にもあったような、色とりどりの美味しそうなお菓子。

シルナの好きなチョコ菓子は勿論、洒落た練り切りやら、カラフルな水羊羹、フルーツ大福など。

見ているだけでもお洒落な和菓子の数々が。

これには、シルナも目を見開いていた。

「お、美味しそう…!」

あっという間に懐柔されそうになっているシルナ。

駄目だ。砂糖の誘惑を前に、シルナはあまりにも弱過ぎる。

思わず手を触れそうになったところを、俺はゲシッ、とシルナの足を踏みつけた。

「いたっ!」

「おい、落ち着けシルナ」

「…っ」

向こうの良いように乗せられてどうする。

「さぁ、遠慮するな。他のみなも」

と、イシュメル女王は会場にいる人々に言った。

「今宵は無礼講じゃ。みな、思う存分楽しむと良い」

…だってさ。寛大な女王様だ。

…魔導師に対しては、だが。