10分後。
緊急事態を聞きつけて、学院長室に教師一同が集合していた。
…それから、マシュリと、それに令月とすぐりも。
マシュリはさっきまでいろりの姿で、中庭で生徒達に遊んでもらっていたらしいが。
シュニィが突然学院にやって来た匂いと音を聞きつけて、すぐさまこちらにやって来たそうだ。
令月とすぐりに至っては、最早声をかけるまでもなかった。
いつの間にか二人共、しれっと、ちゃっかり、学院長室に合流していた。
自分達も大人ですが何か?みたいな顔で。
明らかに今回の件は、子供に聞かせる話じゃないが。
追い出したとしても、素直に引き下がる奴らじゃないし。
これまでも、何度も力を貸してもらっている手前。
今更、令月とすぐりだけ蚊帳の外にする訳にはいかなかった。
…話を戻して。
「戦争って…どういうことなんですか…!?」
事態を聞きつけて駆けつけた天音は、既に顔が真っ青になっていた。
同じく駆けつけたナジュの方は、既にシュニィの心を読んで、ある程度事態を把握しているのだろう。
憮然として、そして難しそうな顔をしていた。
「今…アーリヤット皇国が戦争してるって、本当なんですか…?」
「…えぇ、残念ですが…本当です」
天音の問いかけに、シュニィは沈鬱な面持ちで頷いた。
「…そんな…」
誰よりも平和を望む天音は、戦争という言葉だけで、身が竦んでしまったようだった。
…その気持ちはよく分かる。
俺だって、情けないことに、心の奥がざわざわしているから。
シルナ曰く、俺は人よりも、恐怖や危機に対して感覚が鋭敏になるらしい。
それは俺の中にいる…『前の』俺の影響だ。
『前の』俺…二十音・グラスフィアは、シルナとの平和な日常を壊されることを、酷く嫌う。
その為、ルーデュニア聖王国の情勢の変化には敏感だ。
…一方で。
「戦争って、アーリヤット皇国が?」
「この間、ミカエルとラファエルっていう天使がいた国だよね」
令月とすぐりが、冷静に尋ねた。
…こいつら、大人より余程しっかりしてるな。
「はい…そうです」
「ふーん。あそこ、戦争してんだー」
「それは災難だね」
二人共淡々として、少しも狼狽える様子はなかった。
…本当に、肝が据わっている。
「お前ら…。…少しは怯えるとか、そういうことはないのか?」
思わず、そう聞いてしまった。
すると、むしろ二人共、俺のその質問に驚いたようで。
「怯える?何に?」
きょとんとして、素でそう聞かれた。
「いや…だって…戦争だぞ?」
「うん。戦争だよ?」
「…そんな…特に珍しくもないみたいな…」
それがどうしたの?と言わんばかり。
「だって、別に珍しいことじゃないでしょ」
「えっ…」
「ジャマ王国では、ふつーにあることだよ?」
「…」
…そうだった。
緊急事態を聞きつけて、学院長室に教師一同が集合していた。
…それから、マシュリと、それに令月とすぐりも。
マシュリはさっきまでいろりの姿で、中庭で生徒達に遊んでもらっていたらしいが。
シュニィが突然学院にやって来た匂いと音を聞きつけて、すぐさまこちらにやって来たそうだ。
令月とすぐりに至っては、最早声をかけるまでもなかった。
いつの間にか二人共、しれっと、ちゃっかり、学院長室に合流していた。
自分達も大人ですが何か?みたいな顔で。
明らかに今回の件は、子供に聞かせる話じゃないが。
追い出したとしても、素直に引き下がる奴らじゃないし。
これまでも、何度も力を貸してもらっている手前。
今更、令月とすぐりだけ蚊帳の外にする訳にはいかなかった。
…話を戻して。
「戦争って…どういうことなんですか…!?」
事態を聞きつけて駆けつけた天音は、既に顔が真っ青になっていた。
同じく駆けつけたナジュの方は、既にシュニィの心を読んで、ある程度事態を把握しているのだろう。
憮然として、そして難しそうな顔をしていた。
「今…アーリヤット皇国が戦争してるって、本当なんですか…?」
「…えぇ、残念ですが…本当です」
天音の問いかけに、シュニィは沈鬱な面持ちで頷いた。
「…そんな…」
誰よりも平和を望む天音は、戦争という言葉だけで、身が竦んでしまったようだった。
…その気持ちはよく分かる。
俺だって、情けないことに、心の奥がざわざわしているから。
シルナ曰く、俺は人よりも、恐怖や危機に対して感覚が鋭敏になるらしい。
それは俺の中にいる…『前の』俺の影響だ。
『前の』俺…二十音・グラスフィアは、シルナとの平和な日常を壊されることを、酷く嫌う。
その為、ルーデュニア聖王国の情勢の変化には敏感だ。
…一方で。
「戦争って、アーリヤット皇国が?」
「この間、ミカエルとラファエルっていう天使がいた国だよね」
令月とすぐりが、冷静に尋ねた。
…こいつら、大人より余程しっかりしてるな。
「はい…そうです」
「ふーん。あそこ、戦争してんだー」
「それは災難だね」
二人共淡々として、少しも狼狽える様子はなかった。
…本当に、肝が据わっている。
「お前ら…。…少しは怯えるとか、そういうことはないのか?」
思わず、そう聞いてしまった。
すると、むしろ二人共、俺のその質問に驚いたようで。
「怯える?何に?」
きょとんとして、素でそう聞かれた。
「いや…だって…戦争だぞ?」
「うん。戦争だよ?」
「…そんな…特に珍しくもないみたいな…」
それがどうしたの?と言わんばかり。
「だって、別に珍しいことじゃないでしょ」
「えっ…」
「ジャマ王国では、ふつーにあることだよ?」
「…」
…そうだった。


