神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

しかし、そんな俺とシルナの心の内など、誰も察してくれるはずがなく。

「ようこそキルディリアへ。聖賢者シルナ・エインリー様」

早速、さっき俺達に拍手を送ってくれたパーティー客の一人…年配の男性が、俺達の前に現れた。

「あ、は、はい。どうも…」

「羽久・グラスフィア様も。是非とも一度、お会いしてみたいと思っておりました」

「は、はぁ…」

…ごめん。あんた、誰…?

しかし、戸惑う俺達に関係なく…。

「聖賢者様は、ルーデュニア聖王国イチの魔導師と聞いております」

「え?い、いや…そんなことは…」

「いえいえ。ご謙遜なさらずとも良いのです」

愛想良く笑う老紳士。

「自分にとっては、尊敬の的なのです。あなたの提唱する魔導理論、魔導科学の研究…。どれも素晴らしいものです」

「…」

べた褒めされて、シルナは喜ぶどころか困り顔だった。

「そんなこと、私に言われても…」って感じだろうな。

「それに、あなたもです。羽久・グラスフィア様」

「はっ?」

突然、老紳士はこちらに視線を向けた。

び、びっくりした。

「聞くところによると、ルーデュニア聖王国イチの時魔法使いだとか」

「い…いや、別にそれは…」

逆に、俺にはそれくらいしか出来ることがない、ってだけで。

決して自慢するようなものじゃない。

「いやぁ、羨ましい。あの魔法は、扱いが非常に難しく、特別に適性のある者しか使えないと言いますからな」

「…まぁ…それは…そうですけど…」

「自分も時魔法を勉強していた時期がありますが、どうも自分には適性がなかったようで…。いやお恥ずかしい」

別に、恥ずかしいことでも何でもないぞ。

時魔法の適性の有無なんて、大した問題じゃない。

使えなくても全然困らない。

見れば分かる。

だって、この老紳士が首から提げている証明書。金色なんだもん。

つまりあんたも、上級魔導師ってことだろ?

礼装を着ていても、その証明書はつけてなきゃいけないのか。

老紳士だけじゃない。

この会場に集まっている人はみな、ドレスの上に、タキシードの上に、首からネームホルダーを提げていた。

しかも、金色のカードを。

つまりここに集まっているのは、キルディリア魔王国でも有数の上級魔導師達。

1等車に乗ることが出来る、優秀な金カード持ちなのだ。

…こんな立派なパーティー会場に来てまで、そのカードはやめろよ。

ネックレスの代わりなのか。そうなのか?

でも、金カード持ちってことは、この人も相当優秀な魔導師なんだろう。

「えっと…。…それじゃあ、その、失礼ですが、あなたは何の魔法を…?」

「自分は、読心魔法が得意でしてね」

「…えっ」

と、思わず言ってしまった。