神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

俺とシルナが連れて行かれたのは、広々とした客室。

いかにも、高級ホテルのスイートルーム、といった豪華な部屋だ。

ここもクリスタルが基調になっていて、クリスタルの椅子や机や、大きなシャンデリア。

その他、美しく透明な調度品の数々が、惜しみなく置かれていた。

…逆に落ち着かないな。この部屋。

しかも、俺はシルナと同室で良いのに、俺とシルナそれぞれに、きちんと二部屋用意されていた。

お陰で、この落ち着かない部屋に一人で過ごさなければならない。

「何か必要なものがありましたら、何でも遠慮なくお申し付けください」

と、サクメ。

ここまで色々と完璧に用意してもらってるのに、他に必要なものなんてあるかよ。

…それよりも。

サクメが一礼して立ち去るなり、俺は向かい側のシルナの客室に飛び込んだ。

「シルナ…!この部屋、」

「ふわぁぁぁ。冷蔵庫の中、チョコのお菓子がいっぱい…!」

…。

…は?

あろうことか、シルナは部屋に備え付けられていた冷蔵庫を開け。

その中を覗いて、大はしゃぎだった。

「こっちはチョコ団子、こっちはチョコ大福…。うわぁ、チョコどら焼きも美味しそう!」

「…」

「このチョコモナカ…!モナカ生地までチョコが、はっ!?」

とんとん、とシルナの肩を叩くと。

シルナは、愕然と目を見開いたまま振り返った。

…よう。お取り込み中のところ悪いな。

ところで俺、真面目な話しようと思って来たんだけど。

今、やめといた方が良い?

「…シルナ。お前まさか、そのチョコ食べるつもりじゃないよな?」

「ぎくっ」

ぎくっ、って何だよおい。

…お前って奴は…。

「チョコの誘惑にほだされてんじゃねぇよ…!アーリヤット皇国の時もそうだったろ!」

シルナを懐柔しようと思ったら、とりあえず珍しそうなチョコ味の菓子を与えておけば良い、って。

万国共通の常識になってしまいかねない。

お前、聖賢者の癖に、そんなチョロい男で良いのか。

「た、たたた食べないよ!も、ももも勿論!」

めちゃくちゃどもってるんだけど?なぁ。説得力皆無なんだけど?

「ちょ、ちょっと偵察。冷蔵庫の中に何か仕掛けられてないか、ちょっと偵察しただけだから」

シルナは誘惑から逃れるように、冷蔵庫をパタンと閉めた。

…何が偵察だよ。

罠を仕掛けるにしても、さすがに冷蔵庫には仕掛けないだろ。

駄目だ。シルナは頼りにならない。

こうなったら、自分の身は自分で何とか守るしかなかった。

自分の身も、勿論シルナの身も。